葵せきな先生書き下ろしTwitter小説
35【ゲーマーズと過去と未来―後編―】9月28日 掲載
ゲスト挿絵イラスト「江鳥さくら」さん
「あと、もう一つ。あの日の気持ちに関して……というより、あの日以降の一貫した気持ちに関して、お伝えしておきたいことがありました」
「一貫した気持ち?……ゲーム大好き?」
「あはは、それはここ数年ずっとですね」
「そうね、私もよ」
二人、くすくすと笑い合う。そうしてようやく照れも緊張も薄れたところで……僕は、その「感謝」を口にした。
「……僕、天道さんに会えて、良かったです」
「え……」
目を丸くする彼女に、僕は少し照れながら続ける。
「僕も天道さんも……いえ、上原君も、アグリさんも、チアキだって、色々あったじゃないですか、ここ最近」
「……そうね」
「それはたぶん、これからも、そうだと思うんですよ」
「ええ、きっとそうね。残念ながら」
苦笑し合う僕ら。
僕は天道さんを改めて見つめて「それでも」と微笑む。
「僕はあの時、天道さんに声をかけて貰えて、良かったなって。今、幸せだなって、思うんです。心から。だから……ありがとうございました、天道さん」
深々と頭を下げる僕。
と、天道さんもそれに笑顔で返してきてくれた。
「礼を言うのはこちらですよ、雨野君。私だって貴方と出逢えて、良かったわ。心の底から、そう思う。……たとえこの先何があったとしても、ね」
僕らは、互いに熱く見つめ合う。
そうして僕らは、何かに引き寄せられるように、椅子から立ち上がり、二人……。
〈キーンコーンカーンコーン〉
『っ!』
と、刹那昼休み終了間際の予鈴がなり、僕らはハッと我を取り戻した。
「(僕は今、何しようと……!)」
急激に恥ずかしくなってくる。見れば、天道さんも顔が真っ赤だった。
「は、早く戻らないとね、雨野君!」
「そ、そうですね、天道さん!」
僕らは何かを誤魔化すように手早く片付けを済ませると、そそくさと部室を出る。
そのまま二人、教室へと続く廊下を歩きながら、今の空気をなかったことにするかのように、話を戻した。
「と、ところで天道さん、『この先何があったとしても』とか言ってましたけど、具体的には、どんなこと想定してました?」
僕の質問に、天道さんは隣を歩きながら「そうねぇ」と思案する。
「たとえば……私が雨野君の浮気を疑うとか?」
「あはは、ないです、ないです。だって僕ですよ?」
彼女の心配を僕が一笑に付すと、彼女が少しムッとして訊ね返してきた。
「雨野君はどんなことがあると思うのですか?」
「あー……僕個人のことで言えば、多少は友達や知り合い増えたので、修学旅行は楽しくなる気がします!」
「そうね。それは理にかなった予想だと思うわ」
「ですよね!」
楽しみだなぁ!
でも、楽しい予想した分、負の予想もしとかないとな。
「あとは……僕が天道さんにフラれたりとか?」
「ハッ」
一笑に付されてしまった。そ、そうか、これはないよね。
その後も僕らは未来に思いを馳せながら、廊下を往く。
そうして僕らは互いの教室への分かれ道まで来たところで……一度向き合って、笑みを交わし合った。
「なんにせよ、雨野君。これからも……」
「ええ、天道さん。これからも……」
二人、一歩距離を詰める。そして――
――僕らは、がっしりと、握手を交わし合った!
『楽しいゲームライフを!』
そのまま互いに背を向け、颯爽と別れる二人。
…………。
結局僕らはどこまでいっても、恋人であるより先に――ゲーム好き仲間なのであった。
「一貫した気持ち?……ゲーム大好き?」
「あはは、それはここ数年ずっとですね」
「そうね、私もよ」
二人、くすくすと笑い合う。そうしてようやく照れも緊張も薄れたところで……僕は、その「感謝」を口にした。
「……僕、天道さんに会えて、良かったです」
「え……」
目を丸くする彼女に、僕は少し照れながら続ける。
「僕も天道さんも……いえ、上原君も、アグリさんも、チアキだって、色々あったじゃないですか、ここ最近」
「……そうね」
「それはたぶん、これからも、そうだと思うんですよ」
「ええ、きっとそうね。残念ながら」
苦笑し合う僕ら。
僕は天道さんを改めて見つめて「それでも」と微笑む。
「僕はあの時、天道さんに声をかけて貰えて、良かったなって。今、幸せだなって、思うんです。心から。だから……ありがとうございました、天道さん」
深々と頭を下げる僕。
と、天道さんもそれに笑顔で返してきてくれた。
「礼を言うのはこちらですよ、雨野君。私だって貴方と出逢えて、良かったわ。心の底から、そう思う。……たとえこの先何があったとしても、ね」
僕らは、互いに熱く見つめ合う。
そうして僕らは、何かに引き寄せられるように、椅子から立ち上がり、二人……。
〈キーンコーンカーンコーン〉
『っ!』
と、刹那昼休み終了間際の予鈴がなり、僕らはハッと我を取り戻した。
「(僕は今、何しようと……!)」
急激に恥ずかしくなってくる。見れば、天道さんも顔が真っ赤だった。
「は、早く戻らないとね、雨野君!」
「そ、そうですね、天道さん!」
僕らは何かを誤魔化すように手早く片付けを済ませると、そそくさと部室を出る。
そのまま二人、教室へと続く廊下を歩きながら、今の空気をなかったことにするかのように、話を戻した。
「と、ところで天道さん、『この先何があったとしても』とか言ってましたけど、具体的には、どんなこと想定してました?」
僕の質問に、天道さんは隣を歩きながら「そうねぇ」と思案する。
「たとえば……私が雨野君の浮気を疑うとか?」
「あはは、ないです、ないです。だって僕ですよ?」
彼女の心配を僕が一笑に付すと、彼女が少しムッとして訊ね返してきた。
「雨野君はどんなことがあると思うのですか?」
「あー……僕個人のことで言えば、多少は友達や知り合い増えたので、修学旅行は楽しくなる気がします!」
「そうね。それは理にかなった予想だと思うわ」
「ですよね!」
楽しみだなぁ!
でも、楽しい予想した分、負の予想もしとかないとな。
「あとは……僕が天道さんにフラれたりとか?」
「ハッ」
一笑に付されてしまった。そ、そうか、これはないよね。
その後も僕らは未来に思いを馳せながら、廊下を往く。
そうして僕らは互いの教室への分かれ道まで来たところで……一度向き合って、笑みを交わし合った。
「なんにせよ、雨野君。これからも……」
「ええ、天道さん。これからも……」
二人、一歩距離を詰める。そして――
――僕らは、がっしりと、握手を交わし合った!
『楽しいゲームライフを!』
そのまま互いに背を向け、颯爽と別れる二人。
…………。
結局僕らはどこまでいっても、恋人であるより先に――ゲーム好き仲間なのであった。