葵せきな先生書き下ろしTwitter小説

17【花憐と亜玖璃1】7月5日 掲載

ゲスト挿絵イラスト「urute」さん

 ある日のゲーム同好会。
「あ、僕、ちょっとトイレに」
「じゃあ俺も」
「あのあの、自分はちょっと妹に電話してきますです」
 そう言って一斉に席を立つ三人を、私と亜玖璃さんは快く見送り。
 ……そこで、気づいてしまった。


『(……なにこの組み合わせ!)』
 とても気まずい、ということに。
 そもそも私、天道花憐と亜玖璃さんは、同好会仲間でこそあるものの、そこまで親しい間柄ではない。
 かといって、今更他人行儀な会話をする関係でも、なく。結果……。


『…………』
 圧倒的沈黙。この学校のリア充達の頂点ともて囃される私と、元気で活発な可愛いギャルの二名が揃って、無言という……一種の地獄がそこに発生した。
 二人の願いは、今、一つ。
「(……雨野君!)」「(……あまのっち!)」


 彼さえ間に入れば回る状況。しかし悲しいかな……今さっきトイレに向かったばかりの彼が、十秒やそこらで帰ってくるはずもない。
 私は腹をくくると、亜玖璃さんにニコリと微笑みかけた。


「亜玖璃さんは、お好きなゲームとかあるんですか?」
「え? いや、亜玖璃、ゲームはやらないから……」
「そ、そうでしたね」
「う、うん。……なんかごめん」
「い、いえ」
「…………」
「…………」
 地獄だった。


 と、今度は亜玖璃さんの方が私に気を遣った様子で語り出す。
「ぎゃ……逆に、天道さんの好きなゲームの話とか、どうぞ!」
「え? 私の好きなゲームですか? そうですね……」
 顎に指を当てて考える私。十秒……二十秒……。


「あ、あの……天道さん?」
「……すいません亜玖璃さん。軽々しく答えられる質問じゃ、ないのです、それは」
「そ、そうなんだ」
「はい……」
「…………」
「…………」
 今、再びの地獄だった。今回は全面的に私が悪い。


『…………』
 いたたまれない。が、雨野君達は流石にもうすぐ帰って――
 ――と、私のスマホにメッセージが着信。
〈雨野景太:清掃業者が入ってたので、旧校舎の方まで遠出してきますね〉
 …………。
 地獄は、まだまだ、続くようだ。

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