葵せきな先生書き下ろしTwitter小説

29【星ノ守姉妹とラノベ攻防】8月24日 掲載

ゲスト挿絵イラスト「KaeruNoAshi」さん

 あたし、星ノ守心春はエロゲーが好きである。
 しかし、我が姉……星ノ守千秋はエロゲーどころか「萌え」をまるで認めない感性だ。美少女アニメのCMに舌打ちする場面を何度見たことか。
 当然、あたしは趣味を打ち明けられるわけもなく……。


「コノハコノハ、ギャルゲーシナリオライターの書いた新作ラノベのサンプルとか、全く興味ありませんよね?」
「うぐ!?」
 ある日姉からそんな言葉を投げかけられた瞬間、あたしはソファの上で硬直した。
姉は説明を続けてくる。


「あのあの、なにを勘違いしたのか、ラノベ出版社さんからうちのブログに『新作サンプル提供』のご案内が来ましてですね」
 我が姉は一応ゲームクリエイターの端くれである。
 あたしは前のめりになりかける自分をぐっと抑えつつ応じた。


「へ、へぇ。……た、タダで貰えるなら、貰っておいたら?」
「でもでも、要らないです。コノハも要らないですよね?」
 要るよ! 喉から手が出るほど欲しいよ!
「そうだけど……えと、あたしの友達が、読む、かも……」


「そんな友達とは縁を切りなさい、コノハ」
「ラノベに厳しすぎない!?」
 我が姉の想像以上の「萌え嫌い」に戦慄するあたし。
 やばい、このままじゃ、サンプルが貰えない。なんとかしなくては……。
「ほ、ほら、読む以外の使い道も……」


 本棚の賑やかしにするとか、重しにするとか……と苦しい提案をするあたし。
 姉は「ふむ」と頷いたのち、サラリと提案を付け加えてきた。
「焚きつけ用とか?」
「鬼か」
「それでも要りませんが」
「鬼過ぎる」


 もうサンプルを貰うのは無理なのか。あたしは諦めかけるも……最後に一つ、賭けに出てみることにした。
「雨野センパイが、羨ましがるかも」
「貰います」
 即決だった。
 結論。うちのこじらせた姉は、最近意外と、扱い易い。
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