葵せきな先生書き下ろしTwitter小説
2【天道花憐とランチタイム】6月14日 掲載
ゲスト挿絵イラスト「森乃ばんび」さん
天道さんと時折ゲーム部部室で昼食をとるようになって数週間。
当初の緊張ももうすっかり消えたある日のこと、天道さんが突然、熱い吐息まじりに切り出してきた。
「したいわね、雨野君」
「ゲームが、でしょう」
もうこの程度の勘違いネタなら即座に看破する僕である。しれっとツナサンドをかじりつつ応じる。
天道さんはタマゴサンドを右手に持ったまま、はふぅとため息をつく。
「周囲にはこんなにゲームがあるのに……」
「ですね。とはいえ昼休みに部のゲーム機動かすのはちょっとアレでしょう?」
「分かってます。ですから雨野君、何か非電源で出来ることしましょう」
「非電源……ご飯食べながらだと、しりとりとかですか?」
「しりとり……」
僕の相変わらずな平凡発想に、天道さんが柔らかく笑む。
「雨野君は……本当に、いつも、雨野君ですね」
「なんだろう、愛こそ感じますけど辛い。その微笑、凄まじく辛いんですが!」
「ハイスコアの、ア」
「始まった!」
突然の開始に動揺しつつも、僕はどうにか切り返す。
「あ……あじさい」
「ゲーム用語縛りで」
「まさかのルール追加! じゃあ……アイテム?」
「無限1UP」
「ぷ? えっと……『ふ』でもいいですか?」
「駄目です」
「厳しい!」
僕は相変わらずな天道さんに苦笑する。と、彼女がハッとした様子で慌て出した。
「あ、あの、ごめんなさい雨野君、私ったらまた……」
「いえ、いいんですよ。僕、天道さんのそういうところが好きなんで」
「え?」
「え?」
…………。
……二人、思わず俯き、サンドイッチを、小刻みに、黙々と、食べ始める。
…………。
結局この日のしりとりは、決着つかずじまいのまま、その幕を閉じたのだった。
当初の緊張ももうすっかり消えたある日のこと、天道さんが突然、熱い吐息まじりに切り出してきた。
「したいわね、雨野君」
「ゲームが、でしょう」
もうこの程度の勘違いネタなら即座に看破する僕である。しれっとツナサンドをかじりつつ応じる。
天道さんはタマゴサンドを右手に持ったまま、はふぅとため息をつく。
「周囲にはこんなにゲームがあるのに……」
「ですね。とはいえ昼休みに部のゲーム機動かすのはちょっとアレでしょう?」
「分かってます。ですから雨野君、何か非電源で出来ることしましょう」
「非電源……ご飯食べながらだと、しりとりとかですか?」
「しりとり……」
僕の相変わらずな平凡発想に、天道さんが柔らかく笑む。
「雨野君は……本当に、いつも、雨野君ですね」
「なんだろう、愛こそ感じますけど辛い。その微笑、凄まじく辛いんですが!」
「ハイスコアの、ア」
「始まった!」
突然の開始に動揺しつつも、僕はどうにか切り返す。
「あ……あじさい」
「ゲーム用語縛りで」
「まさかのルール追加! じゃあ……アイテム?」
「無限1UP」
「ぷ? えっと……『ふ』でもいいですか?」
「駄目です」
「厳しい!」
僕は相変わらずな天道さんに苦笑する。と、彼女がハッとした様子で慌て出した。
「あ、あの、ごめんなさい雨野君、私ったらまた……」
「いえ、いいんですよ。僕、天道さんのそういうところが好きなんで」
「え?」
「え?」
…………。
……二人、思わず俯き、サンドイッチを、小刻みに、黙々と、食べ始める。
…………。
結局この日のしりとりは、決着つかずじまいのまま、その幕を閉じたのだった。