葵せきな先生書き下ろしTwitter小説
14【雨野景太とフリーゲーム2】6月30日 掲載
ゲスト挿絵イラスト「かまた」さん
僕の敬愛するクリエイター《のべ》さんの新作ゲームが公開された。就寝前、早速それを開始した僕は、プロローグ段階から繰り出される超展開の数々に翻弄される。
果たして僕は、無事このゲームを終え、寝ることが出来るのだろうか……。
「まさかガキ大将のしげるが、本気で主人公とは……」
ゲーム開始から三十分。主人公の「しげる」を操作し、「隣の西村さんから醤油を借りてくる」というまさに「おつかいパート」をプレイしながら、僕は嘆息していた。
このゲームのタイトルは《食虫戦艦・ナガイモ》であり、更にプロローグでは《野菜戦艦・トマト》が描かれていた。
なのにゲーム本編は「しげる」の日常である。
「……誰かに、主人公は人間にしろと強制されたかのような雑さだな……」
作り手の制作環境に思いを馳せつつ、ゲームを続けていく。
「ま、そのうち、話が合流するんだろう」
そう諦めて、更に続けること、十分。二十分。……三十分。……一時間。
『しげるや。湿布を貰ってきておくれ』
「長いなおつかい!」
もうタイトルを「おつかい少年・しげる」にして頂きたい。
また戦闘行為がないものだから、本当に「おつかい」作業でしかない。
「ね、眠い……!」
唯一の戦闘が、この睡魔との戦いである。
しかし、こんな不完全燃焼でやめたくもない。
僕は更にしげるの操作を続けた。そうして……更に一時間。
『おい、しげる。えっと……石拾ってきて、石』
「いじめか!」
遂にはその辺の少年にテキトーなおつかい指示を出される始末である。
ガキ大将設定はどこへ……。
そうして更に続けること、一時間。
遂に、話が動きそうな場面に出くわした。
『しげるや。裏山で、長芋を一本、掘ってきておくれ』
「おっ」
タイトルにある「ナガイモ」要素が出てきたのである。
「これが戦艦になるのかな」
期待を胸に、裏山に向かう僕。
果たして、その結果は……。
『長芋はごはんにかけて食べると、おいしいねぇ』
『おいしいねぇ』
しげる一家の夕食シーンが流れて、終わりだった。
一夜明ける暗転演出の後、家を出たしげるが告げる。
『よぅし、今日もおつかい、頑張るぞー!』
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!」
――僕の長い夜は、まだまだ、終わりそうになかった。
果たして僕は、無事このゲームを終え、寝ることが出来るのだろうか……。
「まさかガキ大将のしげるが、本気で主人公とは……」
ゲーム開始から三十分。主人公の「しげる」を操作し、「隣の西村さんから醤油を借りてくる」というまさに「おつかいパート」をプレイしながら、僕は嘆息していた。
このゲームのタイトルは《食虫戦艦・ナガイモ》であり、更にプロローグでは《野菜戦艦・トマト》が描かれていた。
なのにゲーム本編は「しげる」の日常である。
「……誰かに、主人公は人間にしろと強制されたかのような雑さだな……」
作り手の制作環境に思いを馳せつつ、ゲームを続けていく。
「ま、そのうち、話が合流するんだろう」
そう諦めて、更に続けること、十分。二十分。……三十分。……一時間。
『しげるや。湿布を貰ってきておくれ』
「長いなおつかい!」
もうタイトルを「おつかい少年・しげる」にして頂きたい。
また戦闘行為がないものだから、本当に「おつかい」作業でしかない。
「ね、眠い……!」
唯一の戦闘が、この睡魔との戦いである。
しかし、こんな不完全燃焼でやめたくもない。
僕は更にしげるの操作を続けた。そうして……更に一時間。
『おい、しげる。えっと……石拾ってきて、石』
「いじめか!」
遂にはその辺の少年にテキトーなおつかい指示を出される始末である。
ガキ大将設定はどこへ……。
そうして更に続けること、一時間。
遂に、話が動きそうな場面に出くわした。
『しげるや。裏山で、長芋を一本、掘ってきておくれ』
「おっ」
タイトルにある「ナガイモ」要素が出てきたのである。
「これが戦艦になるのかな」
期待を胸に、裏山に向かう僕。
果たして、その結果は……。
『長芋はごはんにかけて食べると、おいしいねぇ』
『おいしいねぇ』
しげる一家の夕食シーンが流れて、終わりだった。
一夜明ける暗転演出の後、家を出たしげるが告げる。
『よぅし、今日もおつかい、頑張るぞー!』
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!」
――僕の長い夜は、まだまだ、終わりそうになかった。