葵せきな先生書き下ろしTwitter小説
9【天道花憐と幻の事故】6月23日 掲載
ゲスト挿絵イラスト「ぼし」さん
私、天道花憐はゲーム部の部長である。
部長と言うからには、ゲームの実力的にも部の頂点でありたいところなのだけれど……現実はそう上手くいかない。
いつものようにニーナ先輩に格ゲーでコテンパンにされ、私はそっとため息を吐いた。
「なぜ勝てないのでしょう、私」
私の弱音に、ニーナ先輩が奥歯でガムを噛みつつ応じてくる。
「一言で言えば、考えすぎなんだよ、天道は。ゲームも……あと、恋も」
「なぜ恋を付け加えたのですか」
先輩は画面に目をやったまま続ける。
「天道って、しっかり戦略やプランを持って行動するじゃん? それって確かに強いけど、同時に、読みやすくもあるんだよね」
「ではどうしろと」
「リズムを崩す意外な行動を取る」
「たとえば?」
「……奇声をあげるとか」
「意外すぎませんか!?」
私のツッコミに、ニーナ先輩はしらっと応じてくる。
「それぐらいの気概で臨めということ。恋も」
「いちいち『恋』を付け足してくるのやめてくれません?」
「深みが出るかと……」
「出ませんから」
そうはツッコみつつも、しかし、先輩の論理は一理あるかもしれないと考える私。
恋は意外性。それはその通りな気がする。
「……よし」
私は決意を固めると、ゲーム部後の、雨野君との下校へと思いを馳せたのだった。
そうして下校時刻。校舎玄関で雨野君と合流した私は、一念発起、腰をくねくねさせつつ、きゃぴっと彼に挨拶してみたのだった。
「や、やーん、ダーリン、お・ま・た・せ☆ きゅるん!」
「…………」
「…………」
「…………」
「……さ、帰りましょうか、雨野君」
「そうですね。なんか僕、頭がくらくらします、今日」
「奇遇ですね雨野君。私もです」
……事故なんてなかった。なかったと言ったら、なかったのです。
部長と言うからには、ゲームの実力的にも部の頂点でありたいところなのだけれど……現実はそう上手くいかない。
いつものようにニーナ先輩に格ゲーでコテンパンにされ、私はそっとため息を吐いた。
「なぜ勝てないのでしょう、私」
私の弱音に、ニーナ先輩が奥歯でガムを噛みつつ応じてくる。
「一言で言えば、考えすぎなんだよ、天道は。ゲームも……あと、恋も」
「なぜ恋を付け加えたのですか」
先輩は画面に目をやったまま続ける。
「天道って、しっかり戦略やプランを持って行動するじゃん? それって確かに強いけど、同時に、読みやすくもあるんだよね」
「ではどうしろと」
「リズムを崩す意外な行動を取る」
「たとえば?」
「……奇声をあげるとか」
「意外すぎませんか!?」
私のツッコミに、ニーナ先輩はしらっと応じてくる。
「それぐらいの気概で臨めということ。恋も」
「いちいち『恋』を付け足してくるのやめてくれません?」
「深みが出るかと……」
「出ませんから」
そうはツッコみつつも、しかし、先輩の論理は一理あるかもしれないと考える私。
恋は意外性。それはその通りな気がする。
「……よし」
私は決意を固めると、ゲーム部後の、雨野君との下校へと思いを馳せたのだった。
そうして下校時刻。校舎玄関で雨野君と合流した私は、一念発起、腰をくねくねさせつつ、きゃぴっと彼に挨拶してみたのだった。
「や、やーん、ダーリン、お・ま・た・せ☆ きゅるん!」
「…………」
「…………」
「…………」
「……さ、帰りましょうか、雨野君」
「そうですね。なんか僕、頭がくらくらします、今日」
「奇遇ですね雨野君。私もです」
……事故なんてなかった。なかったと言ったら、なかったのです。