葵せきな先生書き下ろしTwitter小説

33【星ノ守心春と生徒会の実存】9月21日 掲載

ゲスト挿絵イラスト「シメジ藻」さん

 あたし、星ノ守心春が会長を務める碧陽学園生徒会には、過去、自分達の活動をライトノベルに落とし込んで出版していた代があるという。
 ……正直、アホじゃないかと思う。
 異世界転生を夢見るより遙かにクレイジーだ。自分ラノベ化。


 その点、あたしという生徒会長は実に真っ当な人間だ。
 文武両道・才色兼備・元気溌剌・性欲過多。
 どこを切り取っても恥じる部分の一切ない、ラノベには全然向かない純白女子。
 それがあたし、星ノ守心春なのである。


 そんなあたしは今日も今日とて、健全な心で懸命に生徒会活動に勤しむ。
 超絶美少女役員の皆様が集まる会議の前には、なで回すように椅子を拭き。
 会議の後もまた、皆様の温もりがあるうちに、なで回すように椅子を拭く。


 女子水泳部から備品の補給要請等があれば会長たる私自らが率先して視察におもむき。
 茶道部で電球が切れたと聞けば、肩車「する側」の役に名乗り出る。そこは絶対に「される側」じゃない。する側だ。なんと美しい生徒会長精神だろう。


 でも正直……あたしは碧陽学園生徒会長としてキャラ立ちが極めて弱い。
 昔はラノベ化する程濃かったらしい生徒会の会長が、今代は、ただ有能で純粋で可愛いだけ。それでいいのだろうか?
 そう弱気になってしまう日も、時には、あって。


 そうしてあたしは今日も一人、放課後の生徒会室でどんよりと書類仕事をする。
「はぁ……先代に比べて、やっぱり、キャラも行動も薄いかなぁ、あたしって」
 自分達のエロゲ化の企画書を書きながら、あたしは重いため息をついたのだった。
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