葵せきな先生書き下ろしTwitter小説

19【上原祐と友達紹介1】7月7日 掲載

ゲスト挿絵イラスト「KaeruNoAshi」さん

「お前が最近よくつるんでる雨野って、実際どういうヤツなのよ?」
 級友の雅也がそんな質問を繰り出してきたのは、珍しく二人で下校した日のことだった。
 街へと向かう道すがら、俺は少し考え、返す。
「ゲームで喩えるなら、村人Dだな」


「村人Dて。つまり見た目通りの地味なヤツってことでいいか?」
「ああ。間違っても勇者一行には加われない、薄いキャラだ」
「地味に酷ぇなお前」
「ただ一つ注意点は――ヤツが村人Aじゃなくて、村人Dなところな」
「どういうこと?」


「つまり、村人Aっていうのが、勇者が村に入って最初に出逢う『○○村へようこそ!』って言うキャラだとすんじゃん?」
「ああ」
「B、Cがさりげない噂話をするヤツ。で、村人Dあたりがいよいよ語るわけだよ」
「何を」


 雅也の質問に、俺は大きく息を吐きながら答える。
「『ああ、○○という道具さえあればなぁ』みたいな話をさ。つまりは勇者達の具体的な行き先を提示するのが、村人Dっつうわけだ」
「? えっと……どういうこと?」


 まだ説明がのみ込めない様子の雅也に、俺は続ける。
「その一挙一動が、ひいては主要キャラ達の行動目標にまで影響するモブキャラ。それが村人Dだ」
「よく分からねーんだけど」
「そう、よく分かんないヤツなんだよ」


 俺の説明を受け難しい顔をする雅也。
 彼はしばし唸るも……結局最後には、酷く単純な質問を繰り出す。
「で、いいヤツ?」
 そしてその質問にだけは、俺もまた、堂々と……胸を張って答えられたのだった。
「すげーいいヤツ」
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